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オバサンは良く喋る
オバサンは美術館が好き
日本人は印象派が好き
印象派の殿堂、パリのオルセーが改装中

様々な偶然が重なり、今、東京の大美術館はオルセーからの貸し出し品のみならず、オバサンの喧騒に満ち満ちるという不幸に見舞われている。

美術解剖学会の大会、横浜そごうの鴨居玲展に合わせ上京した僕は、三菱一号館美術館のマネ展国立新美術館のオルセー展にも足を運んだ。

死せる闘牛士、ゾラの肖像、モリゾの肖像…
数々のマネの代表作を無数のオバサンの頭が遮る。
ふと前列から聞こえて来た言葉は、「あれ?睡蓮は来てないのね!」
お約束のようだが、睡蓮はマネでなくモネである。

新美のオルセー展はポスト印象派のテーマで、第一章がモネやドガや同時代のややアカデミックな作品、以降にセザンヌやゴッホやゴーギャンが展示される。
第二章は点描の部屋、点描と言えばスーラとシニャック、スーラとシニャックと言えば点描、両者の作品が続く。
如何にも俗物顔のオバサマから、わざとらしい驚嘆の叫びが上がる。
スーラさん、こんな絵も描いてたのね!」

第八章は“内面への眼差し”と題され、ルドンやモローの幻想的な画面が並んでいた。
僕は運悪く、そのオバサンと歩調が一緒だった。
「へ~!“内面へのメザシ”の部屋!」
「どれも内面を描いてるのね!」
「これはどの辺りに内面が表れてるのかしら?」
「あれはどの辺りに内面が表れてるのかしら?」
ヴュイヤールの『ベッドにて』はサインが下部でなく、左上に書かれてある。
「いや!何か字が書いてあるわ!あれは内面のこと書いてあるのかしら?!」
その一室で50回は発せられたろう、メザシのオバサンの「内面」のフレーズは、一週間経った今も、僕の内面でリフレインしている…


左から、エドゥアール・マネ『死せる闘牛士』(マネ展より)/クロード・モネ『ロンドン、国会議事堂、霧に差し込む陽光』/ジョルジュ・スーラ『ポール・タン・ベッサン、外港、満潮』/エドゥアール・ヴュイヤール『ベッドにて』(後3点オルセー展より)
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